やさしいからだ/安永知澄

やさしいからだ (1) (ビームコミックス)

やさしいからだ (1) (ビームコミックス)

 ついに買ってしまった。こういった短編連作という形式をとりながらも、前後の話で登場人物が微妙にリンクしてゆくというのは好きである。
 先日の短編集も良かったが、これはもっと良い。各々の話に登場する人物は精神・肉体構造に周囲と違うものを持った人物でそれと向き合いながら―もしくはそういう人物を前に友人・恋人として葛藤する。
 自分の身体を一番よく知っているのは他人であるはずのかかりつけの医者だ。というのは良く聞く話であるが、実際に自分の理想と現実の身体は異なるし、自分の身体を完璧にコントロールするのは難しい。
 そういった自分―もしくは他人の身体に抱く思いとの歪みをそのままに、作者の思うままに描き出すということは、わしの心にサンドバッグにジャストミートしたみたいにズンと打ちつける重みを残す。
 自分がどこから来て、どこへ行くのか。っていうのは、わしが初めの頃、ものを書くのにいつも思っていたことであるが、この漫画を読むと、自分という人間の何かきれっぱしを見つけることができそうな気がする。そんな漫画であった。