絶体絶命

 深夜の地元のレンタルビデオ店で中学の頃の友人と会う。中学のときにわしを野球部へと引きずり込んだキャッチャーである。
「今、ちょうどOがいるから声かけてけ」
Oは中学の途中で転校してしまった男で、わしとTとは同じクラスだった。
「びっくりさせたいから、後ろから肩を叩け」
とのTの指示に従い、とりあえず、後ろからいきなり肩を組み「久しぶり」と声をかけてみた。
「あ?おめぇ、だれだ?」

や・・・やべぇ!!チンピラに声かけちゃった!!
「おい!なんとか言えよ!」
な・・殴られる!!
「って・・・さかもとじゃないか!!髪伸ばしたんだ!」
気づいてくれた。急にやさしくなった!!
 中学のときは運動神経が良くて、極心空手に通っていた男。おつむはあんまり強くなかったので、休み時間に突然始まる体力自慢。バック宙を披露して、そのまま頭から着地。高等部からゴッっというヤバイ音を立てて脳震盪を起こし、みんなを感動の渦にまきこんだO。
 高校でボクシングをやっていたと聞いていたが、ヤバイ筋肉質のチンピラになっていた。
「今度、一緒に野球やろうぜ!!」
と別れ際、肩を叩かれた。たぶん、その「今度」って奴は強制参加なんだろうなぁ。と思った。