産卵

「帰ってきたら、サプライズがあるよ」
「何だよ。サプライズって」
「かあさんね。卵産んだの」
「ああ、便秘治ったんだ。おめでと。七色亜茶を凍らせて、融かしながら飲むといいって言おうと思ったのに」
「そうじゃないってば。卵流さないよ」
「流さないの?汚いよ」
「まぁ、帰ってきたらびっくりするよ」

 チップ(前からいたほうの犬)がこっち来いと引っ張るので、行ってみるとケージの中に子犬がいた。メスのジャックラッセルテリア。親父の衝動買いらしい。月賦。
 娘のようなものができたのが嬉しいのか大喜びのチップ。
「名前はチューシーだ」
と自慢げな父。その名前はチップの時に、名づけでもめたときの名前だ。とっくに忘れたと思っていたが、いまだに根強く覚えていたらしい。何年前の話だよ、と。
 わしが生まれる前からいた犬はチャップだった。なので「チャ・チ・チュ・チェ・チョと並べるんだ。次はチューシーだ」といっていた親父の発言が現実となってしまったのだ。
 よちよちの子犬をケージから出すとすぐにチップがのしかかる。ホワッツ マイケルの話って実話っぽいな。と思っていたら、母親も同じことを考えたらしく
「チップとチューシーの間に子供ができたら、チェって何がいいかな?」
と言い出した。気が早いっつーの。


「・・・チェホンマン
殴られた。