ジョニー復活

 黒木知宏を観るために幕張へと行って来た。
 夏休み最後のホームゲームとあって、人の入りは多い。というか多すぎる。チケット売り場に長蛇の列。指定席は完売、自由席でも立ち見という有様。しかも、ロッテの白いユニフォームを着た人が多い。みんなが待ち望んでいた黒木の復活をびんびんと感じた。
 立ち見覚悟で内野自由席に入ると、うまい具合に家族連れとカップルの間に一席だけ隙間が。家族連れの母親らしきおばちゃんに確認をとって入れてもらう。
 試合開始の一回表、マリーンズの選手が守備につくところで一人ずつ名前がウグイスにコールされるのだが、「ピッチャーは黒木知宏選手 背番号54!」って言うところで黒木が一塁線で一度お辞儀したところで、うるんで鼻水をだしてしまった。まだ投げてないのに。
 毎回のように得点圏にランナーを出しながらも黒木は踏ん張る。ホームは踏ませない。後ろの仲間も守備で黒木に応える。あの雰囲気が良かった。打撃はやけにホームラン狙いのように感じたが、それでもサブロー、イスンヨプ、里崎の3本が飛び出し、投げては黒木‐藤田‐薮田‐小林雅英の完封リレー。実を言うとわしはこれまで何度もマリンスタジアムに応援に来ているが、マリーンズがわしの目の前で勝利したのは始めてである。おととしの王貞治の胴上げを目の前で見たときの涙を忘れない。

 どうでもいいけど、イスンヨプの打席の時に「韓国の人って親しい人には名前の最後の母音のaにして呼ぶって母親が言ってたな。ヨンジュナとか。そうするとイスンヨプはスンヨパ?」とか考えてたら、スンヨプがホームランを打ったのでびっくり。今度からスンヨパだ。
 彼は最初、鳴り物入りでマリーンズにきたときは嫌いだったが、真面目でちょっと小笠原みたいなクールさと真摯に練習に取り組む姿に心打たれて好きになった。

 最後のお立ち台、やっぱヒーローは黒木。6回のマウンドで吼える姿が何度もスクリーンに映される。あの姿を待ち望んでいたんだ。
 インタビュー途中でベンチから小宮山が飛び出してきて、黒木に向かって「本日の主役」と書かれたたすきを投げつけ、黒木はそれをつけてインタビュー。いいわ、この雰囲気。インタビューのあとに客席に投げ込まれるたすき、さらば。ちょっとほしかった。
 やっぱ、お前がいないと始まらないよ。って、思った。ロッテの味はソフトバンクみたいな華やかさはないけど、こういった地獄を見てきた泥まみれの男達のチームってことだと思う。小宮山、堀、初芝たちベテランと、西岡や今江などの若手の融合があるからこそ、今年は強い。一位ソフトバンクとのゲーム差3をひっくり返すことを願うばかりである。