生まれてごめんなさい

 いや、わしは本当はそんなこと思ってないはずなんです。
 わしは愛と平和の使者として、博愛主義に満ちていたはずなんです。
 たとえ、目の前にカップルが仲睦まじく歩いてても慈愛溢れる目で見てられたはずだったんだ。
 しかし、最近のわしは荒みに荒んでたよ。もう、カップルを見れば痰を吐き、イケメンな男を見れば「うはwwwwこいつ穴に埋めても罪に問われねぇよな」とか思ったり、人の出身地(特にK本県)を「山しかないんだろ?ってかカルデラしかないんだろ?」とか言ったり、人の住んでる場所(特に多摩)を「おめぇらは都民とか名乗って都会派ぶるなよ」とか言ったりして、わしは他人を不快にさせる男だったと思う。ホントに申し訳ない。
 なんで、わしがここまで目が覚めたかとみんな疑問に思ってるだろう?
 つい先日、バイトの帰りに中学の頃からの友達であるNと再会したので、一緒に帰った時のことだ。Nとは一時期帰りの電車が合って一緒に帰ってたんだけど、受験が始まりうちの学校が自由登校になると全く会わなくなった。彼女が志望大に受かったかどうかもぜんぜん知らないままだった。
 大学に入って、彼女と同じ高校出身の人がいたので、その人づてに聞いたところでは浪人した、ということだったので、ずっと浪人したものだと思っていた(夏合宿中にNはNでも同棲別人ということが発覚したが)。
 再会して、一緒に帰りながら近況報告。わしの近況を話してから、彼女に尋ねると彼女は「いやぁ、第一志望には受からなくて、名前もいえないような馬鹿大学に行ってるよ」と言っていた。最近は駅ビルのレストランでバイトしてて、その帰り道とのこと。なので、その同じ出身高校の人の話をして、「ずっと、浪人してるかと思ってたよ」と言った。
 すると、彼女は急に黙り込んでから「ごめん、嘘ついてた。実は浪人してるの・・・」と搾り出すように言った。
 なんとなく、ガツンときた。そのまま気まずそうにしながら帰った。雨が降ってたので持ってた傘を示し「入る?」と聞くと「いや、いいよ」と拒否される。仕方がないので二人で濡れて帰った。
 そんなわけで、わしは博愛主義に目覚めた。ようするに気配りのできる男になろうと思った。まぁ、正直、わしにはデリカシーのかけらもないわけだけど。

 とりあえず、空中浮遊10秒の大台を目指すから、みんな応援しててくれッ!!