宮沢賢治とますむらひろし

風の又三郎―雪渡り・十力の金剛石 (ますむら・ひろし賢治シリーズ)

風の又三郎―雪渡り・十力の金剛石 (ますむら・ひろし賢治シリーズ)

文庫で出たのでそろえて購入。ますむらひろしの描く宮沢賢治が一番しっくりくるように思える。
 宮沢賢治の世界観は好きだ。ますむらひろしの描く宮沢賢治の世界は透き通っていて、きらきらと輝く描写に優れていると思う。擬人化された猫たちの物語はほのぼのとしているようで、その瞳は凛として切ない。
 それが数多くの童話を遺したが、不遇であった宮沢賢治という人物の描く物語。そして、童話でありながら宗教観に裏打ちされた深い真意をざっくりと切り出す。
 宮沢賢治という作家はオカルティシズムを抱かせやすい作風の持ち主である。「クラムボンはクプクプわらったよ」かつて誰もが教科書に出てくるこの言葉の意味に悩んだことであろう。
 言葉としてありながら、その意味を完全に示すことのない台詞の数々は読者にさまざまな想像をかきたてる。その想像は多岐にわたるゆえに、宗教とつながりオカルティシズムにつながるのだろうか。

 ますむらひろしのまんがはそういったみやざわけんじに対する見方の数々から、偏りを減らした視線で映像化してゆく。
 それゆえに、誰であってもとっつきやすくそれでいて宮沢賢治の作品の哀しさを切り出したものができあがるのであろうか。