カタリベ/石川雅之
- 作者: 石川雅之
- 出版社/メーカー: リイド社
- 発売日: 2006/03/01
- メディア: コミック
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「ぐだぐだゆうとらんでいっぺん必死に生きてみろよ」
日本では南北朝の争いも収まろうかという時代。日本・琉球・明・高麗の間の海を荒らしまわる倭寇たち。その乱世の中で九姓漁戸*1の御曹司の少年は多くの仲間を失ってしまう。失意の少年の前に現れたのは九姓漁戸でバハン様、日本では八幡様と呼ばれる海の護り神であった。
彼は神と半年生きるごとに仲間をひとり蘇らすことを約束する。100人の死んだ仲間を生き返らせるために、この過酷な時代を50年生き延びることを課された彼の前に現れたのは……。
未完の作品が再販されたそうなので購入。わしは去年、先輩の勧めで読んでからのファンなので週刊石川雅之・人斬り竜馬以前の石川雅之を読んだことがなかったので、この作品は初見。
本当に戦国時代とそしてバハン様という民俗信仰の神、鬼と呼ばれる戦場で発狂してしまった狂戦士たちと、それを飼いならすことで強力な戦闘部隊を操る鬼師。わしの中ではコレだけで十分もののけ姫の世界観である。実際には歴史ではもののけ姫のほうがだいぶ後であるが。
海賊である倭寇をはじめとし、商人や漁師など日本・中国・朝鮮の間の海で生活する人々を描く海洋伝奇物語であるのだが、海賊海賊といいながら陸上・・・しまいには空の上で戦ってる漫画などを思えば、忠実に海上で戦う海賊たちを描いた漫画としても、そして冒険漫画としても秀逸なものであろう。
石川雅之は現在イブニングで連載中のもやしもんが話題であり、週刊石川雅之などのほのぼのとした漫画の印象があったが、このよう特殊な現代とはまったく異なる世界観で描く作品でも、その読者を放さないストーリー性は損なわない。
また、石川漫画の特徴である、描き込みの細かさと緩急の妙もちゃんとあり、このストーリーの続き、少年のその後が気になってしょうがない。
あえて残念な点を言えば、この物語が未完という点一点。本当に勿体無い話である。
と、ベタボメをしたわけですが、正直、ここまでわしの好みにぴったりと来るマンガを読むのがひさしぶりだったので興奮しちゃった。酒も入ってるし。
とりあえず、主人公の少年の行動の裏目に出まくる様は不幸を通り越して悲壮である。
あと、こういった時代設定の漫画にありがちな男臭さが少ないのも個人的にはツボだったポイント。
*1:中国は浙江の漁師の一族。賤民とされた