ONE OUTS/甲斐谷忍
- 作者: 甲斐谷忍
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1999/06/18
- メディア: コミック
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作者が「野球版アカギ」と公言するだけあってこれはなかなか面白い。スポ根が多い野球漫画にあって、「勝つとはすなわち、ドブに落ちて溺れている犬を棒で沈めること」と発言するような男が主人公のこの漫画は従来の野球漫画に対するアンチテーゼともいえる作品だ。
サッカーやバスケのような試合が途切れずに進むスポーツと違い、野球やアメフトには回やターンオーバーがあり、前述の二つのスポーツに比べメンタル面が大きな要素となってくる。サッカーなんかはボール支配率が高いチームが強いかといえば、そういうわけでなく一方的に試合を展開していたチームがいきなり相手のカウンターからのミドルシュートで失点を許し、そのまま敗退ということはよくある話であるが、野球においては圧倒的な力を発揮するチームというのはなかなかひっくり返りにくい。むしろ、圧倒的優位に立つチームが反撃にあう様子というのは、ピッチャーの失投だったり味方のエラー、はては大チャンスでヒット性のあたりを敵のファインプレーに阻まれてしまったことなど、顕著に現れやすい。調子を崩す選手というのはそういうミスなどが頭の中から抜けず、ミスを繰り返すスパイラルに陥りやすい。
これは他のスポーツでも見られることだが、やはり野球においてはワンプレーワンプレーに対して選手に考える余裕が生まれてしまうせいか、如実に現れる。
そのようなスポーツの中だからこそ、120km/hのストレートしか持たなくとも絶対のコントロールと相手の裏を読むギャンブルの勝負勘に長けた渡久地のようなヒーロー(ヒール?)が存在しうるのではないか、と思う。
というようなことをぐだぐだと考えながら読める野球漫画はかなりわしの性に合っている。中学のころに、手塚一志の「バッティングの正体*1」を片手に素振りをしていたバッターだったわしはこういうスポーツ心理学などを盛り込んだ漫画って大好物なんです。