薄灰色に汚れた罪/ジョン・D・マクドナルド/板垣節子

薄灰色に汚れた罪 (海外ミステリGem Collection)

薄灰色に汚れた罪 (海外ミステリGem Collection)

人のトラブルを解決し報酬を得る『始末屋』トラヴィス・マッギー。
 ある日、旧友が土地問題に巻き込まれ、惨殺される事件が起こる。
 トラヴィスは仲間たちとともに、旧友の遺された家族を救うため、そして巨悪に対して復讐するために立ち向かうことに!フロリダの土地開発問題を背景にトラヴィスの頭脳が冴える。

 日本ではあまり刊行されてはいないが、アントニー・バウチャーをして、「ロス・マクドナルドとジョン・D・マクドナルドを仮に混同して読んだとしても決して失望はしないであろう」とまで言われた、ジョン・D・マクドナルド。ペーパーバック・ライターとしてアメリカ国民に愛され続けた作家だと聞く。
 ぱっと読んで、ハードボイルド小説と暴れん坊将軍新堂冬樹が合体したかんじ。
 アメリカの社会問題(といっても1960年代後半のアメリカだが)の暗部を描き出し、その中で爽快に暴れまわるトラヴィスとその相棒マイヤー。弱きを助け、強きをくじく。
 社会問題というドロっとしたものを、単純明快なストーリーによってふっとばす。なんとも王道を行くエンターテイメントストーリーである。
 しかし、一方で物語がとんとん拍子で進みすぎていて、読んでいて手ごたえがない。というか、なんですか、このトラヴィス・マッギーの「俺TUEEEEEEEEEEEEE!!」小説は。
 相手となる悪の組織ももうちょっとマッギーを潰すための刺客を送るなり、何か対抗策を講じてもいいんじゃねーの?

グレイ・サント「財産いくらくらいよ?おいらっち実業家なんやけど〜wwwwww」
ラヴィス・マッギー「14万ドルです」
グレイ・サント「・・・え・・・!?」
ラヴィス・マッギー「一株70ドルの株式を2000持っているんです。」
グレイ・サント「・・・う、うわあ・・・ああ・・・ああああああああああ(イスから転げ落ちる)」
ラヴィス・マッギー「どうかしましたか?」
グレイ・サント「ああ、あふゥッ・・・ひいいい・・ガクガク(足が震える)」
ラヴィス・マッギー「やだなあ、そんなにびびらないで下さいよ。ちょっと相場師が吊り上げた株でもうけただけです
  から^^」
グレイ・サント「ああ・・あ・うんっ・ああ・・・ビクンビクン(小水を漏らす)」
ラヴィス・マッギー「ちなみにあなたの株券はもう紙切れ同然です。」
グレイ・サント「あんっ!ああん・・らめ・・・もうらめえ!ビクンビクン(射精する)」

って感じ。金持ちを株取引で落としてるやり方は、石田衣良の「波の上の魔術師」なんかと同じ感じ。粉飾決算で取引停止とか最近の日本のニュースでも話題に上っているので、ややタイムリーなところか。