泥棒は選べない/ローレンス・ブロック/田口俊樹

泥棒は選べない (ハヤカワ・ミステリ文庫)

泥棒は選べない (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 酔いどれ探偵マット・スカダーシリーズは少し読んだが、まったくカラーが違うと噂のこそ泥バーニィ・ローデンバーシリーズ第一作。
 青い箱を盗んでくれ、得体の知れない男からの依頼を受けイーストサイドの高級アパートに盗みに入ったバーニィ。しかし、不運なことに仕事の最中、近所からの通報で警官が部屋に踏み込んできた。
 万事休すかと思われたが、踏み込んできた警官の中に顔なじみの姿を見つけたバーニィは、依頼人から受け取った千ドルで警官を買収することに。
 未遂だったこともあり、見逃そうとした警官たちであったが、部屋の奥から死体が見つかって……。泥棒バーニィ、大ピンチ。

 これはかなり面白い。酔いどれ探偵というキャッチと裏腹に、生々しいアル中描写とハードボイルドさを見せ付けるスカダーに対して、バーニィシリーズはエンターテイメントを前に押し出したようなキャッチな内容。
 平素は周囲に泥棒であることを隠し、裏の稼業の知り合いを持たない孤高の泥棒であるバーニィが指名手配を受けてしまったことで、自分の二重生活を崩され、その中で自分を探していくような感じなことがテーマにあるんだと思う。
 思ったことは登場人物が圧倒的に少ない。主人公の交友関係の狭さが原因なのかもしれないが、あまりにも登場人物が少ないので海外ミステリを読みなれてない人が陥りがちな「誰が誰だか分からない」という現象にはまずならない。
 一方で、そんな少ない登場人物にとって、舞台マンハッタンは広すぎる。そんなに都合よく全員に関係がつくかよ。他の人物はまだしも、留守にしている間にバーニィの潜伏先にされてしまう部屋の持ち主ロドニィ。
 なんか最後の最後で強引にとってつけたような意外な関係さがちょっと、ぇーってなったけど、それも気にならないくらい楽しい小説だと思う。