ネクロポリス/恩田陸

ネクロポリス 上

ネクロポリス 上

ネクロポリス 下

ネクロポリス 下

 V.ファーという日本とイギリスの文化が混在する国にあるというアナザーヒル。そこは年に一度、〝ヒガン〟の期間、死者が実体を持って目の前に現れるという場所。東大の院生、ジュンはこの怪しげな行事を調べるために、V.ファーに住む親戚と共にヒガンのアナザーヒルを訪れる。
 V.ファーでは「血塗れジャック」と呼ばれる殺人鬼による連続殺人事件が起こっており、人々の関心はこの血塗れジャックの被害者たちがこのアナザーヒルに現れ、犯人を告発してくれるのではないか、ということであった。
 しかし、アナザーヒルに到着したジュンたちを待ち受けていたのはヒルの入り口である鳥居に吊るされ、喉を切り裂かれた死体であった。

 恩田陸お約束の、盛り上げが上手いのに落ちてない。というパターン。
 思うに恩田陸に対する評価って、フィギュアスケートトリプルアクセルを飛んで、3回転半回れたけど着地で転倒したっていう扱いなのかもしれない。つまり、3回転飛んで着地に成功するよりも、3回転半飛んだということのほうが高い評価を受けているような感じ。
 まぁ自分でも何言いたいか良く分からないので、置いておいて。
 上巻での盛り上げ方はよかったし、V.ファーという国やヒガンという奇妙な因習に対して読者をひきつけることはできていたと思う。
 しかし、いかんせん伏線を張るだけの作業に終始し、下巻の最後まで伏線みたいなものを張る勢いで回収がてんで行われないということや、巻頭の登場人物紹介のページに名前が載っているのにぜんぜん物語に出てこないキャラとか、今回は大舞台を使いながら狭いスペースでしか演技をしないような雰囲気がどうしても許せなかった。
 恩田陸は当たり外れのおおきい作家と常々言っているわしだが、「ドミノ」とか登場人物を勝手に暴れさせて走りまわさせれば面白いのに、無理にミステリ調にしようとしたりして、せっかく盛り上がった物語を台無しにしてしまうのは、読んでて、どうしても残念な気持ちが先に立ってしまい、作家買いをする気が起きなくなってしまう。
 そんなわけで恩田陸が大好き、恩田陸ワールド全開がいい。死生観とか考えるのが大好きーって人は読んでみるといいよって一冊。