新本格もどき/霧舎巧

新本格もどき (カッパ・ノベルス)

　初めて買った講談社ノベルスは何か？というくだらない話をしていたときに、みんなが森とか答えてる中で、「ドッペルゲンガー宮」と答えた自分をむしろほこらしく思っている。

これは事件だ。新本格ミステリの名作たちが「もどかれた」!
最終兵器、霧舎巧、炸裂。
記憶喪失の吉田さんは、ミステリマニアの店主が作るカレーを食べるたびに、何故か新本格の名作に登場する様々な探偵になりきり事件に関わってしまう。が、その推理たるや......。
そして真の名探偵は......。
で、吉田さんの過去とは?

帯は豪華、「もどかれた」作家たちからの直筆コメント。
新本格ファンのみならず、「もどかれた」オリジナルを知らない人でも楽しめる、華麗なる「推理&もどき」の世界。

新本格の粋(いき)が詰まった見逃せない一冊。

本書で「もどかれた」作家──綾辻行人、法月綸太郎、我孫子武丸、歌野晶午、倉知淳、山口雅也、有栖川有栖

　都筑道夫の「名探偵もどき」をヒントに新本格をもどいてしまおうというコンセプトの一冊。
　個人的には霧舎巧特有の「ぇーっ！」っていう(本人はマジでやってるんだろうけど)脱力してしまうようなトリックが炸裂しており、結果として満足。
　キャラクター小説的な個性的な登場人物。語り手のエリ、吉田さん、マスター、エリの姉姿子、名園と癖の或登場人物が多いところが楽しい。
　しかし、なんというか、いや本来は同人誌でやっていたネタをやってみたというのだからいいんだろうけども、どこかしら同人的な「身内で遊んでみました」という感が否めない。というか前提としてこのもどかれた作家の作品を読んでないとぜんぜん面白くないと思う。
　まぁ、もどきなんだから本歌を知っていて当然なんだろうけど、複雑な心境である。

　あと、他の霧舎作品にもいえるが、トリックではないけれど、ここぞっていうところで出てくる小道具が「ナンダカナー」という気持ちにさせられる。吉田さんが変身するカレーの秘密とか、ちょっと無いわー。