今日の早川さん/coco

 はてなだいあらーにとって、この本を買うことは義務だ。とか言われたんで買いました。

今日の早川さん

今日の早川さん

 SFオタクにして、ビブリオマニアの早川さんとその仲間、帆掛さん(ホラー)、岩波さん(純文学)、富士見さん(ラノベ)、国生さん(レア本)というそれぞれどこかで聞いたことありそうな名前のジャンルオタクたちが繰り広げる日常。
 本読みにとって、あるあるwwwと頷かせら、そしてトラウマやデジャヴに苦しめられること確実な一冊!

 ブログのほうも読んでいるけど、最後の話で某キャラクターを数ページ前で登場しているのにもかかわらず、「最近見ない」と言っているのはおそらくブログのほうで登場が少なかったことにかかっているんだろう。そんなわけで初見の人もブログと合わせて読むこと。ブログだけ見ている人もいくつか書下ろしがあるからちゃんと本でも読むことを薦める。

 本格オジサン、拳銃、猫、時計は知っていたが、船のマークがホラー&ファンタジーだとは知らなかったのでfirstheavenから聞いてびびった。ためしに家の本棚見たら、S・ジャクソンのソーサリーシリーズがユニコーンであった。いつも読むときは、ブックカバーかけてるんで気づかなかった不覚。
 ネット発祥のオタク系漫画といえば、ダンシング☆カンパニヰよしたにさんによる「ぼく、オタリーマン」。オレンジスター小島アジコさん*1の「となりの801ちゃん」という、オタクの日常を描いた漫画があるが、このオタクの中でももっと狭義的になった本読みをネタにした一冊である。正直な話需要としてみれば、この二つと比べて「今日の早川さん」の需要はとても少ないだろう。
 人間である以上、何かしらに執着を抱いてしまうのが悲しい性である。我が家もぺヨンジュンマニア(ヨン様に関する二次創作なら何でもやる)、ミリヲタ、ジャニヲタという家庭を見ても分かるとおり、何かしらに傾倒している。いや、そもそも七人のオタクという映画が示すとおり、人の趣味は様々。その数だけオタクはいる。趣味はどんどん細分化され、ジャンル開拓が行われれば行われるだけオタクが生まれる。
 早川さん読者は政治家がローゼンメイデンを読んでいたくらいで熱狂しない。ハインラインムアコックを読む政治家が現れたとき、興奮するのかもしれない*2。オタクは細分化されてゆくにつれて、もっともっとディープになる。「もっとサッカーが上手くなりたい」「もっと勉強ができるようになりたい」「もっとモテたい」人間には向上心がある。しかしオタクはその向上心を「他人よりもこのジャンルにおいては詳しくなりたい」という方向に持っていってしまう。
 本を読むということを趣味とする人間は多い。しかし、それは人によってそれぞれであってYoshi*3が好きな人もおれば、本気で「モテる方法」の本を読んじゃう人間もいる。というか、世の中の読書家の大半は「ほどほど」に読書を趣味としているのであって、村上春樹なら読む、だとか、伊坂幸太郎なら読んでた、だとかそういう程度であって、本格ミステリとは何ぞや、だとか。SFニューウェーブの作家は片っ端から読んでるだとかそんなレベルになってくると周囲も呆れた目で見つめてくるようになってくるわけです。本人は勝ったつもりでも周囲からは評価されない。漫画雑誌も少年ジャンプ・少年マガジン・少年サンデー以外を読んでたらオタク認定です(イブニングはおっさん雑誌じゃないと何度言えば…)。
 科学が進歩したり、スポーツの世界記録がコンマ秒単位でよくなってゆくように、オタクのディープさはどんどんディープになってゆく。そんな最先端、いや最深部のオタクからすれば、売れてる漫画がどうとか、人気のアニメがどうとかそういうものにどうでもよくなっていくのである。もっと次元の高い(深い)オタクトークを求めているのだ。

 これからもおそらくオタク日常漫画は増えてゆくだろう。急増するオタク日常漫画は次第に細分化され、深い次元へと進んでゆくだろう。

「サカモトくんは本をよく読むし、頭良さそうだよね」
ということをよく大人から言われる子供だったが
「本を読む奴はろくな死に方をしないぞ」
という中学時代の担任(体育教師)の言葉が、最も真理に近い気がする*4

*1:大学の側の本屋のホワイトボードにイラストを残してて驚いた

*2:というか早川さんの作中でも本読みと非本読みの間の温度差を取り上げられてたけど、趣味を同じくすることによる喜びってせめて友達の範囲に納めようぜ。政治家が何読んだって関係ないじゃん。

*3:「バキッ!ボコッ!」 「ヒッー!助けてー!助けてー!」

*4:でもこの人、板垣恵介の本のファンと言ってるくせにバキどころか漫画家ってことすら知らなかったんだぜー