女王陛下のユリシーズ号/アリステア・マクリーン

 昨日の我がサークルの50周年記念パーティは盛況のうちに終わり、その中で50周年記念誌“不死鳥”も無事お披露目ができたのだが、不死鳥の編集担当であったid:firstheaven君が熱く「俺をほめてくれ」と言っていたので、ここで変わりにほめておこう。

良ぉお〜〜〜〜〜〜〜しッ!

よしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし
よしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし

りっぱに出来たぞ!firstheaven。

三個か!?はてなスター三個欲しいのか?三個、、、いやしんぼめッ

というわけで(結局12個くらい投げつけた)、その不死鳥に私も2つほどレビューを寄稿したのでようやく解禁というわけでこちらに出させてもらう。

 大学に入学した年、福井晴敏原作の映画「ローレライ」が公開になった。
 大学受験を終えたばかりの友人数名と一緒に観にいったのだが、内容よりもCGを使った潜水艦同士の戦闘シーンで潜水艦「伊五〇七」が発射した魚雷が相手の米軍潜水艦に突き刺さる瞬間、別に自分が潜水艦と共感しやすい体質だとかそういった特殊な人間でもないのに「痛そう」と思ったのが記憶に残った。
 アリステア・マクリーン女王陛下のユリシーズ号」はこの福井晴敏の「終戦のローレライ」からガンダム的なジュブナイルさを抜いた、酷寒の北極海を航行する輸送船団の護衛艦を描いた小説だ。
 「ローレライ」に対する「痛そう」の比じゃない、いわば「激痛」の海戦である。別に自分、船の気持ちとかわかるわけじゃないけど。
 当初、このレビューを書くに当たって、担当からは「冒険小説だよ」と言われた。「深夜プラス1」を読んで冒険小説のロマンに嵌っていた頃だった。しかし、これは冒険小説という範疇じゃなかった。
 アメリカからソ連へと向かう旧式の輸送船団三十六隻。当時、ドイツ軍は海軍戦力の主力をノルウェー沖に配置していたことや北極海の過酷な環境もあり、ユリシーズ号たちにとって決死の航海ともいえる任務である。そんな中でその戦火を潜り抜けてきたユリシーズ号は「幸運な船」と呼ばれるような歴戦の猛者であった。
 このユリシーズ号たちの決死行は、ドイツ軍の潜水艦Uボート重巡洋艦、航空機からの攻撃をこれでもかと浴びる。予想されていた結果とはいえども、一隻また一隻と撃沈されてゆく僚艦たち。もちろん、ユリシーズ号も無傷とはいえない。魚雷をくらうは戦闘機に特攻されるわ。そんな満身創痍の船の上で戦い抜き、散ってゆく者たち。
 熱い。とにかく熱い。海の男として誇りを抱く者、ひねくれているけど義理には厚い前科者、頑固だけど部下に対して絶対の信頼を寄せる船長と聡明謙虚な航海士。ユリシーズ号や輸送船団の乗組員たちがひたすら熱い。そして、そんな男たちの見せ場の連続。たとえるなら歌舞伎の忠臣蔵で登場人物がほとんど斧定九郎という勢い、というたとえではわかりにくいか。しかし、それほどまでにみんな突然に見せ場を作る。
 この小説を冒険小説というのには甚だ懐疑的だ。しかし、それでいてもこの血を流しながらも這いずり回り、己の信念を全うするユリシーズ号の姿には胸を打たれっぱなしである。そういったところも含めて、読み応え抜群、漢のロマンの塊であることは間違いない作品である。