ロング・グッドバイ/矢作俊彦

THE WRONG GOODBYE―ロング・グッドバイ (角川文庫)

THE WRONG GOODBYE―ロング・グッドバイ (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
神奈川県警の刑事・二村永爾は、殺人事件の重要参考人ビリー・ルウの失踪と関わった嫌疑で捜査一課から外されてしまう。事件直後、ビリーが操縦していたジェット機が台湾の玉山の上空で姿を消したことを知らされるが、二村のもとにビリーからの手紙が届く。一方、横須賀署の先輩刑事・佐藤から、国際的な女流ヴァイオリニスト、アイリーン・スーの養母である平岡玲子の捜索を私的に頼まれる。玲子のマンションで、二村は壁に拳銃弾を発見、彼女が事件に巻き込まれたことを知る…。

 チャンドラー愛あふれる一冊。叙情的な文章がビシビシときまってくれる矢作俊彦
 こんがらがってくるようないくつもの事件と多数の事件関係者。関係ないと思っていたラインから新しい手がかりが飛び出してという調子で複雑に絡み合う人物関係がひとつの驚くべき結末へと向かっていく。
 本歌であるチャンドラーの「長いお別れ」に対するオマージュも効いていて、そちらを読んで感動した人にはぜひとも読んでもらいたい。
 終盤にかけてのシーンはまさにチャンドラーからの引用がバンバン飛び出してきて、感涙しむせび泣くことこの上なし。
 個人的にはシリーズ第一作の「リンゴォ・キットの休日」の序文で使われていた言葉を最後に持ってきたところがガッツンきた。そして、「あ〜、アメリカかぁ。これは上手い」とひざを叩いた。たぶん、二村シリーズはこれで完結なんだろうと思った。
 とにかく、シリーズの順番関係なく読むべき。あと、原寮の沢崎もそうだったが日本のハードボイルド探偵は携帯電話が使えないらしい。工藤俊作も生きてたらきっと、携帯電話を使えなかっただろう。