「お前、この間面接受けたところどうだった?」
と親父に聞かれたので、「落ちた」と答えたところ、
「やっぱりな。お前は髪の毛が汚らしいから落ちたんだ。俺のところにお前みたいな髪型の奴が来たら即落とすね」
と得意満面の笑みで散々に言い始めた。
 酒を飲むとそうやって絡む性格なので「はいはい」と思って聞き流していたのだが、親父はこれでもとある業界トップ企業の採用面接で二次面接?くらいを担当していたりするため、母親がそれを聞いて不安になってしまったらしい。ことあるごとに
「ねえ、お前、髪切らないの?」
「やっぱりボーズにしなきゃ駄目なんじゃないの?」
みたいな様子になってしまった。
 襟足ともみ上げがちょっと長いのは確かだし、襟足整ってない状態でスーツを着るのもみっともないと思ったので、仕方なしバイト明けに床屋に向かった。
「本日はどうしましょうか?」
 高校を卒業して以来、久しぶりの床屋。昔、「おいちゃん若くないから、若い子の間で今どんなのが流行ってるから分からないけど、精一杯かっこよくするよ」と言ってポマードをべっとりつけてカッチカチの七三分けにしてくれた店だ。
「就職活動中なので、さっぱりともみ上げと襟足を整えてください」
と頼む。さっそくチョキチョキと始まるが、夜勤明けのわしのまぶたは限界が近かった。
 目が覚めるともみ上げは整うどころか消滅していた。
「はい。就職活動がんばってくださいね!」
 顔が心なしが大きくなった気がする。それに多分、親父はミリヲタだから、たぶんジャーヘッドにすればあの企業の二次面接は一発なんだろうなと今になって思う。
 帰宅してからずっと、婆さんが笑いながら指差してきて、大変つらいです。落ちたことよりつらいです。