変わらぬ哀しみは/ジョージ・P・ペレケーノス

変わらぬ哀しみは (ハヤカワ・ミステリ文庫)

変わらぬ哀しみは (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 読み始めてからシリーズだと気づいた。

 1959年。DCに住む黒人の子供デレクは警察官に憧れる少年だった(当時は黒人警官が珍しかった)。親同士が友人のギリシャアメリカ人の息子ビリーと遊んでいたところを、イタリア系のガキ大将ドミニクとアンジェロのマルティーニ兄弟に挑発され、デレクは万引きをしてしまう。
 デレクの父、ダライアスは黒人を差別せず付き合ってくれるビリーの父マイクの経営する食堂の料理人として働いており、母のアリーシアはハウンド・ドッグと異名を持つ凄腕警官フランク・ヴォーンの家などで通いの家政婦として働いている。兄のデニスはイライジャ・ムハンマド(マルコムX)のブラックムスリム運動に参加したり黒人の人権問題に関心がありながらも麻薬におぼれ始め、性質の悪い連中との付き合いを切れないでいる。
 60年代。ベトナム戦争キング牧師、激動の時代の中で生きるストレンジ一家とその周りの人々の熱く切ない物語。

 一言で言えば、ハードボイルドなのに浦澤直樹「20世紀少年」の最初の方を読んだような気持ちになる。登場人物が多いけど、そんなに苦にならないくらいキャラが立ってる。ちょっと翻訳が三人称多視点の文体のなかでどいつが主観なのか分からなくなりやすかったのが難か。