カリブ諸島の手がかり/T・S・ストリブリング
カリブ海、オランダ領アンティルの中心であるキュラソー島のウィレムスタッドにはベネズエラを追われた元独裁者ポンパローネが訪れていた。ポンパローネの存在はベネズエラのみならずベネズエラに利権を持つ列強諸国にとっても悩ましい存在であった。
そんな中で殺人事件が起こる。殺されたのはポンパローネが宿泊していたホテルのオーナー。たまたま、キュラソーを訪れていたアメリカの大学で教鞭をとる心理学者ポジオリ教授。犯罪心理にも造詣が深いということもあって捜査に協力することになるが……。(亡命者たち)
他、4編の中短編からなる推理・冒険小説集。
推理小説って感じがするのは最初の亡命者たち。あとの小説は推理小説という枠を超えていく。推理小説なのかな?っていう始まりから、次第に冒険小説へと変わっていくような物語。だけど、それがユーモラスな雰囲気であり、はっと気付けば手に汗握る展開が待っていたりと読んでいてついつい夢中になってしまう。
舞台となるのは1930年代中盤。ハイチからアメリカ軍が撤退した直後だから34〜35年であろう。ちょうど、中南米について調べたりしていた時期でもあり、カリブの時代背景なんかも考えて楽しむことができた。
しかし、短編集の最後に収められており、《クイーンの定員》にも選ばれた『ベナレスへの道』を読んで、この作者がこの後、純文学へとフィールドを移したのには納得させられる。
というのがわしの今年の夏休みの読書感想文。