電化製品列伝/長嶋有

電化製品列伝

電化製品列伝

 電化製品オタクによるフィクションの中の電化製品の書かれ方について注目した書評集。
 電化製品ってのはひとつの時代性を象徴するもの。例えば10年前は液晶薄型のテレビがブラウン管にとって変わるとは誰も思いはしなかった。最近、PCパーツ屋の人が話しているのを聞く限りパソコンのモニターにおいては国内のメーカーではもう、ブラウン管の製造は終わったらしく、もはやCRTなんてこれからアンティークになっていってしまうんじゃ無かろうか。
 話は逸れたがとにかくこの本に対する最初の不安は「今の人は知らないだろうけど」なんて前置きをされたあげく、二槽式洗濯機の話をされたりしたらかなわないなあというものだったんだが、さすがは長嶋有
 そういったノスタルジーに浸るのを避けるようなチョイスをとってくれている。取り上げる作品も80年代から現代のもので広い読者に分かりやすいものでいてくれる。
 なにより作品に登場する電化製品を通して我々が思いもしなかった人間性(この場合は電化製品性か)を見出してくれるのがたのしい。そうきたか!と膝を叩く思いである。