博士の異常な発明/清水義範

博士の異常な発明 (集英社文庫)

博士の異常な発明 (集英社文庫)

 清水義範はいい。ホームランは飛ばさないけど、センター返しのヒットをうまく返すような感じがする。
 今回の作品はマッドサイエンティストとその発明をおちょくったようなパロディにした短編集。
 「タイムマシン」「ドクターモローの島」「透明人間」「宇宙戦争」。考えてみれば、現代におけるマッドサイエンティストの発明の多くはH・G・ウェルズの小説からだと思う。わしらが今、SFと聞いて浮かぶ世界はウェルズの小説の世界であると思う。清水義範はそんなウェルズの"発明"をユーモアでぶった切ってゆく。痛快にして不気味である。

 しかし、やはり読んで思うのはH・G・ウェルズジュール・ヴェルヌの生み出した空想科学という概念はすごい発明であるということだ。われわれはいまだに現実どころか空想においても、ウェルズやヴェルヌの地図の上を歩いているんじゃないかと思ってしまう。