ナイン ストーリーズ/サリンジャー

ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)

ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)

 正直、わしゃあメフィスト系というのが苦手っぽいのでメフィスト系の人たちがバイブルのようにしているというだけでサリンジャーを読む気が引けてしまい、途中で止まってしまっている。
 不条理小説というのは読んでいる人間を不安にさせることが目的であるとすると、やはりバナナフィッシュは偉大だと思う。シーモアとシビル。バナナフィッシュという存在が示すのは何であるのか。社会に抑圧され埋没してゆく人間性
 そして、青年シーモアの不可解な言動。少女シビルの無邪気な言葉。そして、シーモアの自殺。
 象徴的なものの羅列と突然すぎる展開とオチ。短編なのでカミュの不条理小説などに比べ軽く読める代わりに、抽象が読者の目の前を高速で丸投げされるので余計にわけがわからなくなる。