砂漠/伊坂幸太郎

砂漠

砂漠

 伊坂が麻雀小説を書くと聞いたので、興味をそそられていたが、麻雀はあくまでも小道具であるように思った。
 春のあたりが、わしが去年の今頃、思い描いていた大学生活に似てて、まぶしくて何度もページを閉じそうになったよ。耐えられない。
 以下ネタバレ?
 わしの中では、伊坂幸太郎金城一紀は近い位置にある。
 砂漠は伊坂が金城のようなものを書こうとしたらできた作品のような気がする。

 伊坂作品の登場人物は薄っぺらい。それが伊坂作品の特徴であり、あからさまに象徴的なキャラクターを配置することによって物語が構成されている。それは、キャラクター小説とは相反するものであった。
 今回の砂漠は「西嶋」という人物を中心に主人公を囲むメンバーの大学生活がかき乱される様を描いているのだが、これはあきらかにキャラクター小説である。伊坂作品にしては珍しく、キャラが立ちすぎているのだ。
 なので、今までの伊坂作品のイメージで読むと違和感を覚えるのではないか。伊坂らしさを感じないのではないかと思う。
 内容はぬるーい大学生の4年間を描いているわけで、全体にわたってぬるい。物足りなさを感じたのは、作者の意図だから、決して失敗してるわけじゃないんだよ。と思うことにする。