痙攣的/鳥飼否宇

痙攣的

痙攣的

伝説的バンドのステージ上で起きた密室殺人!前衛舞踏家が遺したダイイング・メッセージ!客の前から消失したイリュージョニストへの罠!―現代アートシーンで幻想的に繰り広げられる不可能事件。

 firstheavenの中の人から借りて長らく積んであったが春休みを機に読了。
 むしろ、わしが痙攣した。とにかくスゲーとしかいいようがない作品。
以下ネタバレ
 上のような文句とfirstheavenの「これ、とにかくすごいよ」の言葉に胸をときめかせて読み始めるとたしかにコレはすごい。
 明らかに偏りがみられる近代芸術観や、チープな芸術家像に眉をひそめながらも、ミステリとして始まる物語が次第に破綻していくさまは気持ちが悪すぎる。
 そして、4,5話目。ここにくるともうすでに芸術のゲの字はどこかはるかかなたに飛んで行ってしまう。というか、むしろギャグの域に入り始める。というか5話目は完全にギャグでしかないじゃないか。
 形あるものが徐々に崩壊し、最終的にあられもない姿にされてしまうその様はある種、この作品でとりあげ続けた前衛芸術の形ではないかと気づかされる。
 面白いとかつまらないという評価の仕様が無い、とにかく印象に残る破壊力抜群の物語であったのは確かであると思う。