恋文/連城三紀彦

恋文 (新潮文庫)

恋文 (新潮文庫)

 連城三紀彦の文体というのがどこか切ないようでいて、大好きなんだな。

マニキュアで窓ガラスに描いた花吹雪を残し、夜明けに下駄音を響かせアイツは部屋を出ていった。結婚10年目にして夫に家出された歳上でしっかり者の妻の戸惑い。しかしそれを機会に、彼女には初めて心を許せる女友達が出来たが…。表題作をはじめ、都会に暮す男女の人生の機微を様々な風景のなかに描く『紅き唇』『十三年目の子守歌』『ピエロ』『私の叔父さん』の5編。直木賞受賞。(「BOOK」データベースより)

 基本的な構図は年下の男、年上の女という恋愛小説。
 しかし、連城が『戻り川』他でやりたかったように男女の感情。不器用さな付き合いからの中で起きるミステリ性というやつがじんわりと現れており、オチの部分で「なぜ彼は…」「なぜ彼女は…」というのが明かされて、どこかしら切ない気持ちにさせてくれる。
 小説のような恋愛ってのは陳腐だという勝手な偏見を抱いてはいるけど、陳腐だと思ってしまう以上に泣いてしまう自分がいることに気がついてしまう。