笑う男/ヘニング・マンケル/柳沢由実子

笑う男 (創元推理文庫)

笑う男 (創元推理文庫)

 

 正当防衛とはいえ、人を殺してしまったことで精神を病んでしまったヴァランダー。療養生活の中で警察を辞める意思を強めていくヴァランダー。
 そんなおり、療養先のデンマークまで彼を訪ねてきた旧知の弁護士ステン・トーステンソン。父の死に腑が落ちない点があるという。友人の悩みを聞いていられる余裕の無いヴァランダー。
 ついに警察を辞める決意を固め、スウェーデンへと戻った彼が目にしたのはステン・トーステンソンの死亡記事であった。
 友人の敵をとるため、警察に復帰した彼。しかし、トーステンソンの秘書のドゥネール夫人の庭に地雷が埋められる事件が発生。捜査を続けるヴァランダーにも魔の手が迫る!

 今まで、スパイなどと戦ってきたクルト・ヴァランダーであるが、今回の敵は"笑う男"!ヴァランダー、燃え上がる!(主に車が)
 今回の敵は経済界の大物。相棒となる女刑事フーグルンド。若い彼女との間にギャップを感じながらも、互いの能力を認めていくコンビがなかなかカッコイイ。
 実力はあれど若い小娘と侮られがちなフーグルンドのけなげさは読者を惹きつける。
 しかし、今回の犯人。やることはすごいんだが、力を発揮する方向が小さすぎる。庭に地雷を埋めて殺害をはかるとかいろいろな意味ですごすぎだよ!
 そんな犯人がちょっとお茶目なのも相変わらず。
 と、おどけたところもあるが読者のページを繰る指を止めさせない物語の転がり方も見事。警察小説としても秀逸であり、社会派としての要素もあり。さすがというところ。