目くらましの道/ヘニング・マンケル/柳沢由実子
- 作者: ヘニング・マンケル,柳沢由実子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/02/10
- メディア: 文庫
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北欧スウェーデンに短い夏が来た。夏の休暇を楽しみに待ちわびるクルト・ヴァランダー。なぜなら以前から遠距離恋愛を続けてきたリガのバイバ・リエパとデンマーク旅行に行くことになっているからだ。
そんな彼の浮かれた気持ちは一件の通報で無残にも吹き飛んでしまう。菜の花畑に不審な少女が居る。そんな通報を受け、現場に向かったヴァランダー。しかし、少女は彼の目の前で焼身自殺をしてしまう。少女が焼け死ぬのを目の当たりにしたショックにさらに追い討ちをかけるように殺人事件が発生。
被害者は元法務大臣。背中を斧で割られ、頭皮を髪の毛ごと剥ぎ取られた無残な死体となって発見された。
美しい夏のスウェーデンを舞台に起こる異常な連続殺人事件。ヴァランダー・ライジング。CWAゴールドダガー受賞作
今回はサイコパスによる連続殺人事件だ!ヴァランダー・ライジング!
今までの作品では、どこかしらシュールさが抜けないシーンがあった(それもまた味があって楽しいのだが)このシリーズ。しかし、今回は終始一貫してキマってる。分厚く、しかも上下巻というヘヴィさであるが、ぜんぜん無問題。ハズレが無いというのは確かだったが、これはシリーズ最高傑作。
サイコパスというのどかなスコーネでは前代未聞な事件に振り回され、犯人が見えそうなところで見えないやきもきとしたイースタ警察署一同。
またひとり、またひとりと被害者があらわれ、犯人にしか見えないミッシングリンクを探して右往左往。
ついにはヴァランダーの命を狙いはじめた殺人鬼"フーヴァー"はヴァランダーのアパートに忍び込むが、ヴァランダーたちが殺人鬼が隠れているクローゼットを背に捜査方針を話し合うシーンなんかはスリル抜群!
また、当初の少女の自殺を含む、いくつかの伏線を見事に回収してくれるので読者の読後感もすっきり。この点は他のクルト・ヴァランダーシリーズでもおなじみの手腕であるが、無駄な伏線をべたべた貼るよりも、太い伏線を用意してそれを最後にぱっと引っ張ってしまえちゃうほうが読者としても読んでてすがすがしい気持ちになれるだろう。
ヴァランダーシリーズは本当にいい。スウェーデンでやってるっていうテレビシリーズをどうにかして日本で放送させることはできないかね。DVDとか出たら買いかねないよ。うん