ウォンドルズ・パーヴァの謎/グラディス・ミッチェル/清野泉

ウォンドルズ・パーヴァの謎 (KAWADE MYSTERY)

ウォンドルズ・パーヴァの謎 (KAWADE MYSTERY)

 「遺言書を書き換えたい」というセスリー氏に呼ばれた弁護士がウォンドルズ・パーヴァ村に赴くと、セスリー氏はアメリカに発ったあとだった。翌日、隣町ボスベリーで肉屋で牛肉を吊るすフックにぶら下げられた身元不明の男性の首無し死体が発見される。
 死体が発見される前夜、セスリーの屋敷の傍にある森の中《生贄の石》の周囲ではさまざまな人々が不審な行動を取っていた。血のついた旅行鞄、謎の頭蓋骨、さまざまな証拠品が現れては消えて…。奇怪な村の殺人事件。イギリス、ヴィレッジミステリの逸品

 いやー、なんかすっとぼけてるけどかなり残酷な事件なのね。
 グラディス・ミッチェルというのはツボ外しに味がある作家ということだそうなのだが、その作風が余すところ無く現れているのか、面白くなりそうなところは流して、ダラダラとした部分が急激に面白くなる。なんというか、CMのほうが面白いバラエティ番組…っていうのも違うな。
 とりあえず、飽きさせるようなこともないし、読者を食ったような笑いもある。ただ、このツボはずし。好きな人はすごく好きなんだろうなぁとは思うが、どうしてもわしには水が合わなかった。
 そんなツボ外しのおかげで、どの部分が事件の解決の糸口なのか読者にはまったく分からないという状態で物語りは信仰してゆくというか読者自身も登場人物たちとともに暗中模索の状態におかれるが、最後の最後で、探偵役であるミセス・ブラッドリーの手帳の章では、計算ドリルでいうところの答えと解説のようにさまざまな推理のポイントが出ているのでこれがかなり興味深いポイント。
 なかなか上級な謎解き小説といったところだろうか。