蛇は嗤う/スーザン・ギルラス/文月なな

蛇は嗤う (海外ミステリGem Collection)

蛇は嗤う (海外ミステリGem Collection)

植草甚一が評価していた最後のどんでん返しはもう妙技。

 旦那の浮気。家庭のトラブルから逃げて、イギリスからモロッコのタンジールを訪れたライアン。
 異国情緒あふれる旅は彼女を取り巻く陰謀によって台無しにされてしまう。彼女の様子を伺い続ける不愉快なホテルの宿泊客たち。何か裏がありそうな骨董屋、ごろつき。
 そんな不穏な雰囲気の中、ごろつきの男が何者かによって殴り倒される事件が発生。続けざまにライアンのホテルの宿泊客の一人が死体となって発見され…。モロッコという外国におけるイギリス人のコミュニティを舞台におこる怪事件。

 序盤は紀行モノと見間違うようなモロッコ・タンジールの雰囲気を感じさせてくれる。しかし、しだいに物語はイギリスの古典ヴィレッジミステリのようなタンジールのイギリス人コミュニティに入ってゆく。また事件の家庭の中で傷心のライアンが一歩一歩と前へと踏み出すように物語の中における主人公の成長もある。本格ミステリという位置づけではあるがさまざまなジャンルも含み、ミステリ以外の部分でも読むべき部分は多い。
 またこの物語の醍醐味であるところの終盤のどんでん返しは壮絶であり、読者もついついつられそうになってしまうような、犯人と探偵の壮絶な裏のかきあいである。犯人の機転も恐るべきものがあるが、それを逆手に取る探偵はもう異常。
原題の"Snake Is Living Yet"は多大にネタバレだと思った。