見えない都市/カルヴィーノ

見えない都市 (河出文庫)

見えない都市 (河出文庫)

 あらすじというものは無いに等しい。東方見聞録で名高いマルコ・ポーロが元の皇帝フビライ・ハンに対して彼がヴェネツィアから東アジアまでの旅の中で見てきた街を報告するというスタイルで描かれる。
 登場する都市は全部で55。すべてがすべて幻想的な姿を持つ空想の都市である。
 電車の中でよく窓の外に見入ってる子供を見る。子供のころは電車の外の景色が流れていくのを見るだけでもだいぶ楽しかった。しかし、年をとるにつれて次第に電車に乗っている間というのは本を読んだり、携帯ゲームをしたり、何もすることがないときは物思いにふける内向の時間となり、窓の外に意識を向ける外向の時間ではなくなってしまった。
 マルコ・ポーロの語る都市の数々を眺め、ぱらぱらとページをめくり、頭の中で読者は旅人になる。
 都市はそれぞれ現代の人間の持つ問題を髣髴とさせたり、何かのテーマを投げかけてくるような姿をしており、マルコ・ポーロが語り手であるはずなのに現代や未来的な都市も散見される。詩集のように携帯しておいて、ちまちまとページをめくっては何度も楽しめる本である。
 都市と欲望5のツォベイデとか、おそらくわしはそこの住民になりかねないところがあった。危ない危ない。

 ちなみにどうでもいいが、わしの電車の中で、外を見るのにお勧めのポイントは地下鉄の最前部。うまく運転席が覗けたら、その先の窓から外を見ると良い。地下鉄って駅ごとに高低差がだいぶあり、上下の動きが激しいので普段気づかなくても前から見るとちょっとした東京ディズニーシーのセンター・オブ・ジ・アースが楽しめたりする。