古い時計の秘密/キャロリン・キーン

古時計の秘密 (創元推理文庫)

古時計の秘密 (創元推理文庫)

 海外のジュブナイル・ミステリーの草分けともいえるナンシー・ドルーシリーズ。現在でもあっちではどんどん続編が出ており、ジュリア・ロバーツの姪、エマ・ロバーツ主演で映画化もされているのだ。幾度も日本で翻訳出版を繰り返してきた人気シリーズであったが、ついに創元推理文庫から登場。
 最近、もう自分の読書傾向が「注目を集める海外作家」じゃなくて「ちょっとずれた感じの海外翻訳ミステリー」に寄っている事を自覚した上であえて、このナンシー・ドルーシリーズについて軽く説明しちゃうぞ。
 1906年、アメリカの作家のエドワード・ストラテメイヤーが児童文学のために「ストラテメイヤー工房」を開いた。彼はいくつもの名前を使って数多くのジュブナイル作品を世に送り出した。そして、30年代になって少女向けとして書かれ始めたのがこの「ナンシー・ドルー」シリーズ。このときに彼が使ったペンネームがキャロリン・キーン。
 もちろん、エドワード・ストラテメイヤーは荒木飛呂彦のように不死身なわけではないので最初の4作くらいで死去してしまう。その後を継いだのが娘のハリエット・ストラテメイヤー。そして、ハリエットが亡くなったあともその後を継ぐ作家が続き、今現在までに200近いシリーズが刊行されているとかされていないとか。
 んでもって、今年の3月に児童文学で名高い金の星社から出たのが
少女探偵ナンシー・ドルー 戦線離脱

少女探偵ナンシー・ドルー 戦線離脱

 こちら。だいぶ、大きなお兄さんをもひきつける雰囲気の表紙、ミステリクロノの挿絵も担当している甘塩コメコ先生が表紙の新作が出たりしているわけで、こちらはやっぱ現代的なところを意識しているのでナンシーの友達がコンピューターの専門家だったりと現代の子供たちの心躍る設定となっており、初代キャロリン・キーンが書いた第1作にあたる「古時計…」とざっと見比べただけで、感覚としては「サザエに携帯電話をねだるわかめ」を見たようなえもいえぬ感覚に陥る。
 こんだけ、ひっぱって、ただそんなサザエさん感覚の話がしたいだけだったりするので、僕って性質が悪いですね。というわけで、殺人とか血なまぐさい描写は無い、少年少女向けの探偵の大冒険が読みたい方にはぜひオススメの一冊でございます。