消滅島RPGマーダー/柄刀一

 ちょうど、ニュースでやっていたイージス艦と漁船がぶつかったのってこのあたりじゃなかろうかと思った。

 最初はトリビア本として読み始めたこのシリーズも気づけば10作目。

 ついに学習プレイランドを開館した天地龍之介は祖父の墓前に報告をするため、徳次郎の墓がある奥城島を訪ねていた。
 房総半島の先端から船で30分という小さな島はちょうど台風直撃の最中。住職の体調不良もあって目的を果たせずにいた龍之介は民宿で一緒になった徳津善二郎から奇妙な伝承を聞く。奥城島の沖にある抱え小島と呼ばれる島が江戸時代に消滅したというのだ。小島といっても高層ビルほどの大きさがある巨岩。こんなものが消滅するような事件とはどのようなものだったのだろうか。
 頭を悩ませる龍之介たちであったが、その矢先に伝承をなぞらえるかのように人が燃え上がりながら地面に吸い込まれる事件が発生し、地震が島を直撃。自然災害のパニックの中にIQ190の天才・天地龍之介が謎に挑む。

 柄刀一本格ミステリに凝ってしまったことがそもそもの間違いであったのではないかと思う。
 このシリーズも当初「殺意は砂糖の右側に」のときは東野圭吾探偵ガリレオ」のような専門知識ウンチクミステリであった。専門知識がなければ解けない謎というのはアンフェアとして本格ミステリには数えられないが、わしのように別に本格が好きっていうわけではない、というか本格原理主義者には辟易しているような単純なトリビアオタクにはたまらないものがあった。
 このシリーズの醍醐味は作者が練りに練ったけど読者には何のことやらっていうトリックよりも「全速力で走っている人間は左右の分かれ道に当たったとき、無意識的に左に曲がってしまう」とか「なみなみと注いだサラダ油の中にガラスを入れると見えなくなる」といったような「へぇ〜」っていう驚きだったはずだとわしは叫びたい。
 結局、読んでて何が起こっているのか読者はまったくわからなかったこと。島がかなり特殊な地形をしているのに地図を巻頭につけるなどすることを怠ったため、読者が「へぇ」ともいえないこと。ビビる大木でもへえボタンを叩くのを2・3回でやめてしまいそうな中途半端間が漂っている。
 こういうところを見る限り、密室キングダムは柄刀一のピークであったと同時に凋落の始まりだったんじゃないかと思ってしまうのだ。