4-2-3-1―サッカーを戦術から理解する/杉山茂樹

 漫画GIANT KILLINGが流行って、サッカーの戦術論が日本でも語られるようになりつつある。
 日に日に、ウィニングイレブンやらのサッカーゲームが進化しつつあり、サッカー未経験者でもサッカーの戦術の知識が少しずつついてきていることも興味深い。わしもそんなうちの一人で、口でサッカーについて(未経験者の癖に)あーだこーだ戦術についてぶつぶつとつぶやき続ける、一緒にサッカーを見てていやな奴である。
 そんなわしみたいな人種の入門書ともいえる本が出ていた。

4‐2‐3‐1―サッカーを戦術から理解する (光文社新書)

4‐2‐3‐1―サッカーを戦術から理解する (光文社新書)

 この本はスポーツライター杉山茂樹氏が実際に世界で活躍する監督にインタビューをすることによってそれぞれの監督がとった布陣とそのビジョンについて書かれている理論と実例を踏まえた本ともいえる。
 サッカーとは面白いもので、野球よりも将棋のような頭を使わせられるような場面が多い。野球の頭を使うという場合はもっぱら判断力の比重が高く、こういったコツコツと積み上げるような理論の入り込む余地はあまり大きくない。それに対して、サッカーは選手の能力とその配置の地点から勝負が出てくる。
 サッカー選手のファンタジックなプレイは見ていて楽しいし、それだけで十二分にサッカーを見る価値はある。しかし、なぜ現在ロナウジーニョバルセロナから不要とされ、移籍すると噂のACミランベルルスコーニ会長から「ロナウジーニョいらねぇんじゃね?」と言われてしまうのかとか、なぜ世界トップクラスの選手を集めたレアルマドリーは2002年のチャンピオンズリーグ以降国際舞台では結果を出せないのか、などということに対してファンとして少し理解を得ることはサッカーを楽しむ上でこの上なく心強いことなのではないか、と思う。
 何しろ、実際にサッカーをやったことのない元野球少年、しかも、中学生の頃から手塚一志バッティングの正体なんかを読んでいたわしからすれば、サッカーというスポーツを見るときに入り込む余地は選手のものではなく監督の目線でしかないわけであるんだからしょうがない。

 ちなみに本書の感想を言うと、作者にバイアスがかかっているというか、いまだ一部頭に「サッカーは布陣でするもんじゃない」という意識があるのか意見が偏っている感が強く、サッカー初心者のために、という意識もあまりない感じ。あと、ヒディングを褒め称えるのは分かるし、韓国代表に3-4-3を持ち込んで見事に纏め上げた手腕はすごいと思うし、2002年W杯の韓国代表は過去現在含めて、もっともすばらしいサッカーをしていたことには異論は無いけれど、イタリア戦とか審判問題のせいですべて台無しにしてしまったことについて触れないでおくのはどうかと思う。
 あとトルシエのサッカーは時代遅れだとか言われたり、ジーコの戦術は日本代表にマッチしていなかったとかいうのはよく分かるけど、そこらへんでなぜジーコはそれでもその戦術を通そうとしたのかとか、トルシエのサッカー理論の肝とかをインタビューせずにいるのももったいなさ過ぎると思うよ。というか、この二人の書き方がクソミソすぎるよ!
というわけで、この本を読むよりオススメのサイトが↓
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 こちらはライターとしてインタビューを行ったりはしないかわりに布陣から2006W杯のジーコの采配についての謎を解きにかかったりしていて、かなり面白い。普段からスペインサッカーの試合についても布陣や戦術の面から解説してくれるのでたぶん、松木安太郎よりもためになると思う。ぜひ興味ある人は本買うより、こっち見るべし。