CAT SHIT ONE'80/小林 源文

Cat Shit One'80 VOL.1

Cat Shit One'80 VOL.1

 ベトナム戦争も終わって、数年後の1979年。かつて、グリーンベレー特殊部隊「CAT SHIT ONE」のメンバーはそれぞれ別の道を歩んでいた。隊長であったパッキーはアメリカ陸軍対テロ特殊チーム「デルタフォース」創設のため、SAS*1の訓練へと参加し、ラッツは戦場での経験を買われCIAへ。通信担当のボタスキーは日本でファーストフード「ボタバーガー」を起こし大成功を収めていた。
 そんなそれぞれの日常を歩む彼らの元に飛び込んできた「イラン革命*2」のニュース。時代は共産主義との戦いから、テロとの戦いへと変わりつつあった。
 イランのお隣、アフガニスタンではソ連の指導の下共産主義化が進められ、政権はソ連の都合がいい傀儡となっていた政権とそれに反する諸部族が対立、ソ連軍は政府を支えるために軍隊を派遣する。ソ連に対抗するためアメリカら西側諸国はイスラム諸国から義勇兵を募り、支援を行うことに。日本で問題を起こしたラッツは教官としてアフガニスタンへと派遣される。またイギリスでは駐英イラン大使館占拠事件*3が起こり、ここでの活躍からパッキーもアフガニスタンへと派遣されることに。
 ボタスキーも中国とのビジネスの中でアフガンにかかわるようになってゆき、「CAT SHIT ONE」の新たな戦いが幕を開ける。
 あらすじ説明が長いね。実を言えば、まだ前作を読んでいないのであるが、ナショナリズムという近現代発生した代物を表現する一環として人種を動物化するという考えはなかなか良いと思う。ウサギがヘッドフォンを変なところにつけているとかそういう突っ込みどころも可愛くてよい。
 このソ連のアフガン侵攻の時に活躍した連中で後のタリバン政権が台頭したり、アメリカ軍の訓練を受けた義勇兵の中にオサマ・ビンラディンがいたり、後のアルカイダのメンバーとなっていく人物がいたりしたわけで、このアフガン侵攻が落とした影というのはイラクフセイン政権が倒れるまで連綿と続くのだ。
 そんな現代社会を考え直す上ではぜひとも読むべき部分が多い漫画ともいえる。
 ちなみにこの漫画をyuminagaとcorjaに読ませたところ「気持ち悪い」と言われる。アメコミ調に左から右に読む装丁とか違和感だがこれも味だと思うんだがなあ。

*1:イギリスの特殊部隊。史上最強の部隊と呼ばれたりしてめっちゃんこ強い。漫画ではマスター・キートン超人ロックがOBである

*2:アメリカの指導の下、近代・資本主義・脱イスラム化を行っていたイラン・パフレヴィー王朝がシーア派の法学者ホメイニーらを中心とするイスラム教徒によって倒された事件

*3:ロンドンのイラン大使館が反ホメイニ派イラン人テロリストに選挙された事件