ハイウェイとゴミ溜め/ジュノ・ディアズ

ハイウェイとゴミ溜め 新潮クレストブックス

ハイウェイとゴミ溜め 新潮クレストブックス

 ドミニカからアメリカへと移住した少年とその家族の成長を描く連作短編。今ではアメリカで一大勢力を築くようになったヒスパニックによる物語。苦くて臭くて汚くて、でも笑ってしまうような物語。アメリカのプアーな層の小説というのはこういった"泣き笑い"をさせてくれる。
 この作品(原題「Drown」)で注目を集め30代にしてマサチューセッツ工科大学で教鞭をとるようになった今、アメリカでもっとも注目されている若手作家であるジュノ・ディアズ。最近では『The Brief Wondrous Life of Oscar Wao』でピューリッツァー賞を受賞し、ブッカー賞候補とも噂される。こっちの作品はニュージャージー在住のドミニカ移民でSFオタクの肥満青年が年上の売春婦と出会う話から、その青年の姉、母親、祖父へ。ドミニカの独裁政権時代の陰惨な歴史や、貧しい国ゆえの暗黒な物語までと突如として物語はファミリーサーガへと変異を見せ、処女作であるこの『ハイウェイとゴミ溜め』以上の読み応えであり、日本で彼の作品がそこまでメジャーでないのが残念でならないところ。