表徴の帝国/ロラン・バルト

表徴の帝国 (ちくま学芸文庫)

表徴の帝国 (ちくま学芸文庫)

 ポーランド人が3人がかりで電球を取り替えるってのと同じ次元で文学部で仏文をやっている人間というのは難しそうなことを喋っているけれど、内容がとてつもなく頭が悪い、というものがある。
 さすがにジョークの話とはいえ、わし自身の実感として何かしらの話に突如として「ロラン・バルトは……について……」とか「フーコーの……」とか言い出す人間はたいていがあまり頭がよろしくない。いつも思うのだが、これから構造主義に関する話をするときは全員、東北訛りにならなければならないってルールはどうだろうか?*1余談であるが似たような人種に「最近、ずっと言葉というものについて考えてて……」っていうことを言う詩人気取りというのがいる。本当に余談である。

 さて、この『表徴の帝国』、どういう本かといえばフランスの思想家であらせられるロラン・バルトが日本を訪れて、日本という国の文化を自らの思想になぞらえながら解釈していくというコンセプトであるのだが、バルト自身は日本について正しい理解をするつもりなんていうものは毛頭なくて、むしろ外国人から見た「ここが変だよ日本人」を地でいってやろうととことん日本文化を誤解していくトンデモガイドとなっている。
 まじめなガイドなんていうのはそれは旅行会社だとかそこらへんの人たちに任せればいいわけで*2、バルトからしてみれば、自分の言っていることの実践の場として、仮想ユートピアとしての日本を紹介するという話であり、感覚としては旅行ガイドというよりも芥川龍之介の『河童』に近い。何より、バルトが来日したのがだいぶ昔。というか中で使われている写真は全学連の学生だったり、ザ・タイガーズ時代の沢田研二だったりなのでわし自身、これが自分の住んでいる国かと実感を持てずにいるのも大きいのかもしれない。

*1:例:「んだがら、ばるどのゆってるえぐるつーる(エクリチュール)ってのは、「ある時代や集団の中でもちいられた特徴的な言い回し」っつー意味だべしゃ?

*2:旅行会社のガイドというのも明らかに誤解しまくりのその国についてまったく理解していない先入観の塊であるのだが(例:カリブ=楽園)