何故彼女は斧を買ったのか―凶悪犯はメディアに育つのか、マスコミによって凶悪犯にされるのか

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   /__.))ノヽ 
   .|ミ.l _  ._ i.)   
  (^'ミ/.´・ .〈・ リ   犯人は竜騎士07じゃなくてわしが育てた 
  .しi   r、_) |   
    |  `ニニ' /    
   ノ `ー―i 

 いや、バイト中yuminagaと話して思ったけど、日本中、いや世界中のアニヲタを苦しめるためだけにそのクールやってるアニメを模倣した犯罪を助長する組織を作ったらどうなんだろうと思った。
 ひぐらしが放送再開されれば、街中でナタや斧を中高生に無料配布とかやっちゃう。そういうところから攻めていけば、どこかでまた同じ事件を起こすやつが現れるんじゃないかと思う。というか、動機が「そのクールやってるアニメを放送中止に追い込むため」というのも見立て殺人として有りか無しか。
 京都府巡査部長殺害の少女がひぐらしの鳴く頃にをやっていたのか、わしは知らんのだけどわざわざ斧という色々と殺害に不向きな凶器を利用するあたりに尋常じゃないものを感じる。包丁のほうがたいていどこの家庭にもあるだろうし、16歳の女子にとって使いやすいはずだろう。
 今回の事件でマスコミのアニメ叩きは目にしてるけど、オタクのなかでも人を殺しちゃったり凶悪犯罪に走っちゃうやつをひきつけちゃうものは結構多い。乙一のGothしかり、ひぐらししかり、ちょっと前になればエコエコアザラクしかりである。TRPGではワールド・オブ・ダークネスも叩かれていた(後に記すが、コロンバイン高校銃乱射事件である)。
 これらは凶悪事件を起こした犯人が好んで読んだり、観たり、遊んだりしていたものであり、事件後になってマスコミに「犯人の少年の本棚にGOTH」とか書かれちゃうわけである。隣に野球漫画があって、実はGOTHはただの積読状態の未読で、野球漫画のほうが大好きだったとしても、野球漫画は責められない。
 ゴシック・ホラーや悪魔崇拝を描くメディアが叩かれるのはやはりそれそのものが犯罪を連想させるからである。先入観や慣習だけで有罪・無罪を決めちゃうアメリカの陪審員制度では、容疑者が普段何を読み、何を好むかすら判決をわける。
 アメリカのウエスト・メンフィス3事件がこのケース。アーカンソー州ウェストメンフィスで3人の男児が虐待・殺害された事件で逮捕されたのは十代の少年三人。警察のずさんな捜査や知的障害者に対して自白を強要した背景があったりして証拠としてあがったものが限りなくグレーゾーンな状態であったが、センセーショナルであったのはこの犯人の少年たちのリーダー格がゴシックファッションを好むDQNであったこと、ヘヴィメタルファンでピンクフロイドの歌詞を写したノートや、スティーブン・キングの小説を読んでいたことなんかもあり、悪魔崇拝をしているという噂が飛び交い、ウェストメンフィスは大混乱に陥った。結果、少年3人には有罪判決が下り、主犯格には死刑、他の二人にも終身刑が言い渡されるという結果となった。
 しかし、まだその証拠の不十分さから冤罪が騒がれており*1、再審が求められているのがこの事件。少年たち3人を救うためと方々のミュージシャンや女優、タレントなどがこの事件の不公平さを訴えている。
 このウェスト・メンフィス3事件、マクマーティン幼稚園裁判、コロンバイン高校銃乱射事件がメディアを通して、アメリカにおいてモラルパニックを引き起こした3大事件といわれているが、このマスコミによる小説・ゲーム叩きとして興味深いのは1999年のコロンバイン高校銃乱射事件である。
 この事件は「ボウリング・フォー・コロンバイン」が話題になったと思うので、日本人にも記憶に新しいと思う。コロラド州ジェファーソン郡コロンバイン高校で2人の高校生が引き起こした銃乱射事件であり12人の命が奪われた。
 この事件においてもやはり、犯人の少年たちがマリリン・マンソンやラムシュタインのファンであることがマスコミによって取り上げられた。この事件は結構遺族など、全米中から犯人に影響を与えたとされるものが狩られるような状況になっていた。最終的には事件とマンソンの関係は否定されたが(関係があったらたまらない)、これも今回のひぐらしを取り上げるマスコミまんまであろう。
 この事件の後、この事件の犯人である少年2人を主人公に、事件を再現したゲームが作られたことである。スーパーコロンバイン大虐殺RPG!*2と名づけられたこのゲーム、ツールはRPGツクールを使用したものであるが、製作者が犯人たちに共感を持ち、犯人の心理状態を再現しようという試みがとられているこの作品(しかし、事件の後で二人が地獄で鬼を銃殺してまわるのは冗長と思う)、犯人に影響を与えたといわれるものが小道具やパロディとして多く盛り込まれており、BGMはニルヴァーナとスマッシング パンプキンズ、アイテムとしてマリリン・マンソンのCDを拾える。
 このゲームが出展されたスラムダンス映画祭では、事件の影響も考えてと選考から削除され、これに反発した他のゲーム製作者も次々辞退という騒ぎに発展した*3
 この騒動の中で衝撃的なのはこのゲームのプレイヤーからも銃乱射事件をおこす奴が現れたということであろう*4。実際に犯人に悪影響を与えることが認められてしまったのだ。

 という、まぁwikipediaで調べればすぐ分かる、このあたりが前置き。ここからがこのアメリカの事件を通して今回のnice boat現象やひぐらし問題に関してのわしの意見。
 映画・小説・漫画・音楽・ゲーム・テレビ番組、とかく現代の我々を取り囲むメディアはあふれており、現代人は常時何かしらの刺激を受けて生きている。それをうけて犯罪をやめようと思うやつもいれば、同じようなことがしたい、犯罪をおこそう、と思う奴もいる。それを見た・読んだことによって事件を思い出して不愉快になるという人もいる。
 でも、そういう人間の脳内でおきる変換の差異ってのは受け手の問題じゃない。
 製作側はその手の問題に対して責任を問われる必要はない。たしかにテレビ放送の場合、スポンサーの心象というものが存在するゆえに、視聴者の意見以前のところで止まってしまう可能性があるが、表現すること、それを楽しむことの存在そのものを否定する権利は何者にも無いというわけで、メディアの悪影響について書くというのは隣の家の食事にケチをつけるような傲慢さであり、「このようなゲームが存在することは許されない」ということそのものが許されないのだということである。

 てか、勢い余って長々と書いたけど、部屋にテレビも無く深夜アニメにうとく、ひぐらしも鬼殺しの問題編しかプレイしてないわしがこんな語ったというのは、なんというかKORNを聞いていることを否定されたからたいへんむかついたというわけである。

*1:被害者の一人の父親が被害者の血痕のついたナイフを所持していたなど、新しい証拠が挙がっている

*2:http://www.columbinegame.com/ 公式サイト

*3:http://www.4gamer.net/weekly/kaito/110/kaito_110.shtml 4game.net 奥谷海人氏のコラムより

*4:2006年9月 ドーソン・カレッジ銃乱射事件