わしが中学生の時に本当に人を殺そうと思いながら考えたこと

 秋葉原の無差別殺傷事件の報道を観たが如何せん犯人に同調してしまう自分がいる。
 わしは酒鬼薔薇の事件の影響を少なからず受けた少年だったこともある。何より、中学にあがる時にわしは引越をしており、地元の小学校からそのまま中学校へとあがった他の級友に対してアウェーな存在であった。そんなアウェーさからかイジメの標的になっていた。
 それで常々、「俺が学校に包丁を持っていって、クラスの奴らを何人か刺し殺したらどれだけスッキリするだろう」と考えていたのだった。
 結局、そんな暴挙にでることもなく、こうやってここで意味がないブログを書きたれることができているのだが、それは単純に好きな女の子ができたことや気安い友人ができたこと、カミュの『異邦人』*1を読んだことなんかが上げられるか。別に今はそんな「僕はこうしてイジメから立ち直った」なんて美談を話したいわけじゃない。ここで思ったことは当時のわしがずっと学校の内外における理不尽さを覚えていたということだ。この理不尽の原因には「空気が読めない」など少なからずわしに一因があるものもあるだろうが、その渦中にある人間としては理不尽に感じる出来事であった。
 今回の事件を引き起こした原因をハケン社員の労働環境だったり、社会問題に求める報道を見た*2が、それが今回の犯人を凶行に駆り立てたものかはわからない。
 しかし、現代社会、いやどの時代でもコミュニティーの中には理不尽が必ずある。人間はそういった理不尽からのプレッシャーを常に受けている。そのプレッシャーは怒りのやり場が分からないから、よりたちが悪い。
 イジメなんてのもイジメに加担している奴らを殴り返せばいいのかということでもない。イジメの理不尽さはイジメを行う側は数名VSひとりというような規模の小さな出来事だと思っているがイジメにあってる側からすればそれは自分が世界から攻撃をうけているようなダメージがある。『イキガミ』の1話目に登場する男は自分の余命があと僅かとなって、学生時代自分をイジめ、トラウマを植え付けた同級生への復讐を始めるが、イジメをしていた同級生はイジメていた相手のことなんて覚えておらず、彼は復讐の後で虚しさに襲われる。結局、イジメにあっていたという理不尽に対する怒りはやり場が無いのだ。*3
 それらのプレッシャーを脱出する方法として、理不尽を解決するために戦うことが手っ取り早いのか。だからか、とにかく何かに敵を求め続ける人もいる。それは政治であったり、企業や商業主義であったり、リア充スイーツ(笑)であったりする。
 その手段としてデモや抗議活動から、熱烈なネガティブキャンペーンであり、嫌がらせがあり、今回みたいな無差別に人を殺すこともそのひとつなのかもしれない。といっても今回の事件の被害者はいきなりトラックが突っ込んできて、降りてきた男に刺されて人生終了なんだから、これこそまさに理不尽。
 何にしろ理不尽に対して闘争することはそれ自体がまた理不尽になるんじゃないか。
 だから、わしが中学時代、本気で人を殺したかった頃にふと考えたのは「社会へのやり場のない怒りを発散するべく、手を振りあげることは理不尽な社会への同化なんじゃないか」ってこと。それに対する救いとしてわしはサルトルを読んで実存主義、理不尽な毎日の中で自分だけの実存に従うということに感化されていたのかもしれない。いや、そんなことも好きな女の子に振り向いてもらえるまで死ねるかって思いに対する後付けの解釈のような気がする。
 とにかく、そんなこんなで今回の事件の犯人には共感してしまう自分がいる。というか、こんな事件が起こるたびにふとそういうことを考えては自分が中学高校と卒業文集で書いたカミュに対する熱い思いを綴った作文を思い出しては死にたくなるのだった*4
 とにかく何が書きたいかと言えば、つまり無双ゲージがたまっても真・アキバ無双に勝ち目はないよ、って話。

イキガミ―魂揺さぶる究極極限ドラマ (1) (ヤングサンデーコミックス)

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異邦人 (新潮文庫)

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ヴァーノン・ゴッド・リトル―死をめぐる21世紀の喜劇

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*1:わしの中二病のバイブル

*2:凄惨な事件に対して人は“とりあえずの原因”を求めたがる。こういった現象を書いた『ヴァーノン・ゴッド・リトル』はアメリカが舞台だが日本の報道なんかにも起こりうることであろう

*3:わしをイジメていた相手とは地元でたまーに飯を食いに行ったりすることがある。イジメは一過性の事象であり、彼との交友には何も問題は無いが、イジメにあっていたという怒りは未だにあるが、怒りの矛先を向ける相手はもういない

*4:高校時代の担任はソルボンヌに留学していた経験があるのにムルソーをずっとムルリーと誤植していてガッカリした